ICRP111では、『拘束値を適用しない』と宣言している。

これは、拘束値を使うと、実際の防護行動が困難になるという実際の経験からの政策的な判断である。だから、『ICRPの基準は1mSv/年』という『基準』を『拘束値』の意味で使っているとすれば、最初から間違っている。同様に、『ICRPでは1mSv/年以上は原則移住…

ICRP111での『正当化』はICRP90までの『正当化』と意味が異なる。

ICRP90までは被曝自体を選ぶか選ばないかの選択に正の便益(職業上の利益や、医療上の利益)しかないこと前提にしている。しかし、住んでいるところが長期に汚染された状況では、被曝しないことを選ぶと、それに付随する負の便益(=損害。家を追い出される…

日本語の通常の使い方と混同する人がいるので、いくつかのICRPの用語は括弧つきにしてある。

ここで出てくる『正当化』は倫理的に正当化するという意味ではない。ICRPの用語では、『正当化』は被曝をする状況と、被曝をしない状況を比べて、種々の状況を踏まえた上で、被曝する状況を選択しうる(=現存被曝状況では、そこに居住可能とすること)を指…

『被曝1mSv/年を超える地域は移住が原則。』は妄想

ICRP111での『正当化』の意味が分かっていない人が散見され、また、一部の文章を抜き出して、堂々と妄想を書く人がいるので、ICRP111の『正当化』を説明している、ICRP111の3.1を全訳しておく。『正当化』の説明としては、概要の部分で短く触れているが、本…

日本語に翻訳したものの英語原文。

Date: Sun, 25 Mar 2012 03:18:54 +0900 Subject: Re: Mr Gilles Heriard-DubreuilHe [Mr Uesugi] wrote an article of Aarhus Convention in Japanese. http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120313/dms1203130814001-n1.htmThe English transl…

ジャーナリストの方たちへのお願い

私は別に上杉隆を追いつめるのが目的ではありません。何度も言っておりますが、彼が馬鹿を騙して金を巻き上げる商売をしていても、それだけなら、そんなにうるさく言う気はありません。しかし、郡山や福島の被災地の不安につけこんで、被災者を更に加害する…

捏造に予防原則を適用せよ

ここで上杉隆の捏造の手口についてまとめておきます。 捏造は、確認をとりにくい人のコメントの形が多い。 なぜか、そのコメントは、本人の主張に都合のよいものになっている。(というより、本人の日頃の主張そのもの) 捏造がバレると、『取材メモの混合と…

その間に上杉隆はブログを更新して言い訳を書いていた。

ドブレイユさんは、上杉隆に言いたいことをいう機会を与えるために公開を待ってくれと私に頼んできたので、私は上杉隆にドブレイユさんに返事を出すようにとツイートを送った上で、待っておりました。その間に上杉隆は自分のブログで、一連の捏造について言…

上杉隆は、ドブレイユさんが『そんなことは言っていない』ということを知っている。

それをなぜ私が分かるのかというと、私への返事のうち2通をドブレイユさんが、上杉隆にCcで送っているからです。その中には、『私がメールを公開するよ』と書いたものも入っています。さらに、私はそれを上杉隆が読んでいることを知っています。それが分かる…

上杉隆のメルマガに出てくる『G氏』はドブレイユさんではない。

ちなみに、上杉隆のメルマガを購読している人は、ご自分に送られてきたメールを点検すると、『G氏』という名前で、以下の引用がある事が分かると思いますが、ドブレイユさんは、自分がその『G氏』であることも否定しています。 上杉隆の東京脱力メールマガ…

ドブレイユさんは、そんなことは言っていない。

ドブレイユさんから以下のように私に返事がありました。 Date: Mon, 26 Mar 2012 10:47:21 +0100 Subject: Re: Mr Gilles Heriard-Dubreuil From: Gilles HERIARD DUBREUIL ===日本語訳=== 確かに上杉さんは、2012年2月15−16日に、ルクセンブルグ…

さらにもう一つの捏造記事

ただし、私が捏造と言っているのは、このWSJの記者のコメントを捏造したという記事(このコメントはWSJから抗議されて削除されているのは上記の通り)の話ではなく、『いわき漁港』の漁師さんの話でもなく、もう一つのzakzakの記事です。 http://www.zakzak.…

もう一つ捏造ではないかと疑われている記事

いわき漁港の漁師「上杉隆さん、ありがとう!」しかし、いわき漁港は実在せず http://togetter.com/li/278126これだけだと捏造かどうか判断は難しいとも言えますが、WSJの記者のコメントは存在しなかったわけですから、存在しない『いわき漁港』はともかく、…

最初に捏造に気がついた記事

郡山についての間違いだらけの、しかもWall Street Journalの記者のコメントを捏造した顛末については、皆さんご存知の通り以下にまとまっています。上杉隆、夕刊フジで捏造記事か?! http://togetter.com/li/276770私は、上杉隆は、放射能の人体に対する影…

ドブレイユさんを引用している記事は捏造と断じて良い

先日、私が、『福島のプルトニウムは無視して良い』と考えるわけという記事の中で、『プルトニウムフェチ』の人がいると書きましたが、その人の本名は上杉隆と言います。彼の書く放射線関連の記事は、ほとんど間違っていると私は評価していて、それは、別に…

この論文から言えること、いえないこと。

この論文から言えることは、7q11の重複はチェルノブイリでのヨウ素被曝に強く相関しているということです。この重複は、被曝していない検体には全く見つからないこと、また、ヨウ素被曝が甲状腺癌を引き起こす事を強く示唆する疫学のデータを考えると、ヨウ…

オリゴCGHによる、重複領域の詳細マッピング

この詳細領域をオリゴDNAをプローブにして詳細にコピー数を調査すると、BACで行ったCGHと基本的には同じ結果が得られました。ただし、重複している共通領域は、7q11.22-7q11.23の領域の2.9Mbpの領域に狭められました。著者等は、この7q11の重複領域は、性別…

7q11で、遺伝子のコピー数が増えている領域の遺伝子の遺伝子産物が増えているのかRT-PCRで確認した。

先程の検証実験で、7q11.22-7q11.23の領域が増えていることが分かったので、その領域の遺伝子産物がコピー数の増加の結果増えているのかを定量的PCRで確認しています。比較しているのは、『被曝していてコピー数が増えている検体』と『被曝していてコピー数…

FISHによる確認

細胞の中でのコピー数の確認方法には、fluorescence in situ hybridization = FISHといって、蛍光標識プローブを使って、遺伝子の数を組織切片で数える方法があります。ここで、彼らは、参照用として、コピー数の変化していない2番染色体のセントロメアの側…

7q11染色体のコピー数の増加と、チェルノブイリでのヨウ素被曝が相関しているという論文。

以上のことを踏まえて、もとのPNASの論文をみてみましょう。もとの論文は、 Gain of chromosome band 7q11 in papillary thyroid carcinomas of young patients is associated with exposure to low-dose irradiation Hess et. al. Proc Natl Acad Sci U S A…

BRAFの変異

2000年になって、甲状腺癌、黒色腫、大腸癌などでBRAFの変異が関与していることが報告されました。変異のなかでも、遺伝子で1799番目のチミンからアデニンの変異(T1799A)、アミノ酸に直すと600番目のバリンがグルタミン酸に変わる変異(V600E)がもっともよく…

RET遺伝子の構造。RET/PTC組換え

RET遺伝子からできる蛋白質の構造と、組換えでできる融合蛋白質 RET(rearranged during transfection)は、もとはNIH3T3細胞で組み替えをおこす癌遺伝子として発見されました。RETは染色体の10q11.2にあり、増殖因子であるGDNFの受容体です。一回膜貫通構造で…

甲状腺の癌化に関わる遺伝子で一般に分かっていたこと

甲状腺癌は、内分泌器官の癌としてはもっともありふれたもので、新たに診断される癌の約1%にもなります。もっともよくあるのは、甲状腺癌の8割を占める甲状腺乳頭癌であり*1、遺伝子としては、膜貫通型のチロシンキナーゼ型受容体である、RETやTRK、GTP結…

意味がない理由(4)重複があろうとなかろうと、甲状腺癌になるかならないかで、治療方針が決まるわけだから、この検査は、全く意味がありません。

仮に、遺伝子検査をして、7q11の重複があるのかないのか分かったとします。そうすると、4通りの場合があり、普通は以下のように対応することになります。 1)重複がなく、甲状腺癌にならなかった場合は、何もその先しない。 2)重複がなく、甲状腺癌にな…

意味がない理由(3)意味のない傷害を子供に与えるのは、最初から倫理的に正当化できません。

福島での甲状腺癌被曝の規模は、チェルノブイリと比べて二桁は低く、まず、小児甲状腺癌の患者はでないと予測されます。田崎先生の文章を参照して下さい。その状況で、まず癌化もしない子供の正常な甲状腺の組織をとることは正当化されません。

意味がない理由(2)癌化していない甲状腺組織をとって遺伝子検査をしても、異常がみつかるとは限らない。

もとの論文は、甲状腺癌の組織を取り出してきて、その癌に遺伝子異常があるかないかを調べたもの。癌は、異常になった細胞が増殖したものですから、癌の組織だけをとりだすと、その遺伝子異常が分かりやすい。しかし、この論文は癌になる前の組織を調べたも…

意味がない理由(1)もともと、チェルノブイリでの90%以上の小児甲状腺癌は7q11遺伝子重複があるかないかに関らず、チェルノブイリの原発事故が原因である。

後ほど論文については書きますが、チェルノブイリの汚染地域で甲状腺癌を発症した子供の甲状腺癌の組織を調べて7q11の遺伝子異常がある割合は、4割。小児甲状腺癌を汚染地域で発症していても、6割の患者には、この遺伝子異常はない。しかも、ベラルーシで…

染色体7q11の遺伝子検査をして、将来甲状腺癌になるかどうかわかるのだろうか?

結論から言うと、分かるという根拠はないし、そういう遺伝子検査は意味がありません。この話の由来は、国会や、その他の説明資料で後述するPNASのHessの論文を根拠に、児玉龍彦さんが、『甲状腺のヨウ素被曝=7q11での遺伝子の重複=小児甲状腺癌の発症』と…

甲状腺の7q11遺伝子検査は役に立たない

この論文はあまり一般的ではないので、結論から書きます。細かい理由を知りたい人だけ、最後まで読めばよいでしょう。

以下、ききとり。

括弧内は日本語字幕。数字は分:秒。13:33 西脇順一郎: [ICRPの100mSvで0.5 % 死亡するというフリップをみせて] これはどれだけ被曝したら癌でなくなるリスクがですね、どれだけ高くなるかということを示したグラフです。で、ICRPではですね、まあ、ここの…