アップルペクチンは効いているみたい。

さらに、Nesterenkoたちが次のものを出しています。
Reducing the 137Cs-load in the organism of “Chernobyl” children with apple-pectin
Nesterenko, SWISS MED WKLY 134:24, 2004

出している雑誌は、上と同じ。
この論文の大意は、ベラルーシの汚染地域であるゴメルの同じ地域の農村の子供達に、汚染されていない食事を与えると同時に、子供達を二つのグループに分け、21日にわたり、一方は偽薬、一方はアップルペクチンを与えると、アップルペクチンを与えた子供達の方がセシウムの排出が速かったということです。いつ実験を行ったかは書いていないのですが、おそらく2003年ではないかと思います。

この論文には、個別の測定値が書いてあるので、検算できます。
YOB=誕生年、average=平均、stdev=標準偏差、Before=実験開始前のセシウム137の内部被曝(Bq/kg)、After=実験終了時のセシウム137の内部被曝(Bq/kg)です。

これが、ペクチンを与えず、偽薬を与えたグループ。

これが、ペクチンを与えたグループ。このうち、5人の印をつけた人たちは、なぜか終了時に非常に低い値をとっているので、はずれ値ではないかと思います。

実験開始前と終了時の内部被曝をグラフにすると、きれいに一時近似(近似からはずれ値を除いていますが、結果はあまり変わらない)できます。ペクチンを与えた方(●)が、ペクチンを与えなかった方(○)より、ばらつきは大きいのですが、それは、値が検出限界の5Bq/kgに近づく程、測定誤差が増えているためだと思います。t-検定をしても、余裕でペクチンを与えた方が、体内セシウム137は速く下がっています。

残存割合と開始時のセシウム137でグラフを書いてみると、残存割合は確かに開始時のセシウム内部被曝の量に依存せず、一定であることが分かります。これは、セシウムの排出速度が体内濃度=Cに比例することを意味するから、

dC/dt=-aC ここでaは定数

なので、要するに、体内に残るセシウム放射能の崩壊と同じく指数関数に従います。

C= c x exp(-at) ここでcはt=0での体内濃度

つまり、

a= -(ln(C/c)/t)

ここで、日数は21日、最小自乗法でもとめた残存割合から、
ペクチンなし:ln(C/c)= ln (0.8261) = -0.1910
ペクチンあり:ln(C/c)= ln (0.3274) = -1.1166
だから、
ペクチンなし: a= -(-0.1910)/21 = 0.0091
ペクチンあり: a= -(-1.1166)/21 = 0.0532

半減期で表せば、
ペクチンなし: 76.2(日)
ペクチンあり: 16.1(日)
ということです。

なんだか、アップルペクチンが効いているようですが、そもそも、ちゃんとした汚染されていない食事を与えていれば、半減期2ヶ月半程でセシウム137はどんどんなくなって、セシウムが蓄積などする筈がないことが分かります。