意味がない理由(2)癌化していない甲状腺組織をとって遺伝子検査をしても、異常がみつかるとは限らない。

もとの論文は、甲状腺癌の組織を取り出してきて、その癌に遺伝子異常があるかないかを調べたもの。癌は、異常になった細胞が増殖したものですから、癌の組織だけをとりだすと、その遺伝子異常が分かりやすい。しかし、この論文は癌になる前の組織を調べたものではありません。従って、癌が発症する前にパット見は正常な甲状腺の組織をとってきて、遺伝子異常がみつかるという根拠は全くないし、そんなことは論文では述べられていません。また、逆に、その一部組織で遺伝子異常がないとしても、正常な甲状腺を全組織を使って検査する訳にはいきませんから、残りの部分で遺伝子異常があり、癌化する可能性が必ず残ります。だから、検査で異常があってもなくても、癌化については確たることは言えません。

また、もう一つ言うと、論文から7q11の重複が、小児甲状腺癌の『原因ではないか』と言えますが、『原因である』とは示していません。*1

*1:これが体細胞すべてで遺伝子変異をおこしているような、ハンチントン病のような遺伝子疾患なら、白血球や、口腔粘膜細胞をとるだけでも、遺伝子変異が分かり、病気を発症するのか、また、予後が良いのか悪いのか、確実な予測ができる。