甲状腺の癌化に関わる遺伝子で一般に分かっていたこと

甲状腺癌は、内分泌器官の癌としてはもっともありふれたもので、新たに診断される癌の約1%にもなります。もっともよくあるのは、甲状腺癌の8割を占める甲状腺乳頭癌であり*1、遺伝子としては、膜貫通型のチロシンキナーゼ型受容体である、RETやTRK、GTP結合蛋白質であるRAS、とセリンスレオニンキナーゼであるBRAF、その下流のMAPKカスケードが関与していることが知られています。

チロシンキナーゼ型受容体からMAPKカスケードへの経路。括弧内は読み方。
RET(れっと)⇨SHC(えすえちしー)⇨RAS(らす)⇨BRAF(びーらふ)⇨MAPK(まっぷけー)

甲状腺癌の7割でこれらの遺伝子変異がありますが、同一の甲状腺癌でこれらの遺伝子が重複して変異を起こしている事は少なく、(例えば、RET/PTC組み替えを起こしていると、BRAFの変異はない)このシグナル伝達経路はその中の一つが活性化されれば癌化を促進するのに十分である事を示唆しています。

*1:チェルノブイリでは、BRAF変異を主体とする甲状腺濾胞癌が増えていない