ICRP111での『正当化』はICRP90までの『正当化』と意味が異なる。

ICRP90までは被曝自体を選ぶか選ばないかの選択に正の便益(職業上の利益や、医療上の利益)しかないこと前提にしている。しかし、住んでいるところが長期に汚染された状況では、被曝しないことを選ぶと、それに付随する負の便益(=損害。家を追い出されることや、失業すること、ひいては健康を害すること)を考慮せざるを得ない。従って、ICRP111での正当化は、被曝するというマイナスと、被曝を避けることの負の便益を比較して、それがどちらが大きいかの判断をすることを正当化と言っている。

また、ICRP90までの『正当化』は、個人単位での損益計算をしている。しかし、後述のように、ICRP111では、長期に汚染された中で生活するという状況だから、個人だけを考えた場合では出てこない、集団としての価値も計算の中に入り、『正当化』は集団全体としての計算として行うと言っている。