国家の管理できる感染症とできない感染症

この統計をみると、統制国家であるベラルーシでは、予防医学的にはちゃんとした対策を行っていることが分かります。

ポリオ、百日咳、麻疹などワクチンの確立しているものは、統制国家なら管理できる。


例えば小児まひをおこすポリオ。これには確立したワクチンがあり、それを接種するとほとんど防ぐことができます。これをみるとカザフスタン(緑)、ロシア(青)では流行があるが、ウクライナ(黄)や特にベラルーシ(赤)ではほとんど発生していない。ベラルーシEU(紫)より優秀です。



その理由は、近年ベラルーシ(赤)ではポリオのワクチンの接種がほぼ完全に行われて、EU(紫)よりも優れているからです。ロシア(青)やカザフスタン(緑)での流行はワクチンの接種が下がった時期に対応しています。



はしか(麻疹)でも、同様の結果が見られ、90年代からはEU(紫)よりベラルーシ(赤)の方が成績が良い。これも予防接種記録をみると、



旧ソ連圏、特にベラルーシ(赤)では非常によい接種成績を示しています。これをみると、ウクライナ、大丈夫かとも思いますね。



次に百日咳でも同じことが言えて、ベラルーシ(赤)やカザフスタン(緑)はEU(紫)より成績が良く、



それは、予防接種の成績にだいたい比例しています。
以上が、国家が統制さえかければ、比較的容易に管理できる病気の例です。このような病気では、チェルノブイリ後でも事態は悪化していません。



A型肝炎のワクチンはないことはないのですが、一般的ではありません。糞口感染が原因だから、下水周りの衛生環境が分かります。下水を管理するのには巨大なインフラを作らないといけないから、ワクチンで対処するほど簡単ではありませんが、90年頃に多かった感染が徐々に減っていることから、全体の衛生環境が徐々に改善していることが分かります。

以上は、ある程度国家が管理できる病気です。

国家が管理できないもの。梅毒、妊娠。

ところが、ワクチンをうって終わりとならない、人間の性行動の場合は、国家で統制するわけにはいきません。だから、驚くべき違いがでてきます。



梅毒の発生率。
1997年頃をきれいなピークとして旧ソ連各国で梅毒が増加し、その後減少します。これは、それまでの性行動を支配していた規範がこの4カ国で同時に変化しているからです。梅毒の感染は不特定多数の性交渉がないとリスクが上がりませんから、そういう状態(性産業)が出現しないとこういうことにはなりません。現代では梅毒はちゃんとした診断さえできれば、そう高価ではない抗生物質で簡単に治療できる病気です。



同じことは、未成年の出産からも分かります。梅毒ほどはピークが鋭くはありませんが、1994年頃をピークとして、増加、そして、ゆっくりと減少しています。

以上、複雑な社会規範に支配されていた性行動が、一度崩壊し、徐々に再編成されているように見えます。もちろん、この時期におこったのは、ソビエトの崩壊と経済の破綻です。

交通事故もソビエト崩壊後増えている。


90年代初頭には年齢調整別交通事故死が増えています。だからこそ、交通事故まで原発事故の影響だとまで言われたわけですね。カザフスタンでも激増しているので、放射能によるものではないのは明らかです。ただし、実際に交通事故が激増したことは事実。

2012年08月17日金曜日
・二つの被ばく地−チェルノブイリと福島
(3)暗中のリスク/低線量の影響、不透明/医師評価分かれる
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1107/20120817_01.htm

チェルノブイリで最も深刻な健康被害は心的影響だった。「91年当時はあらゆる病気、交通事故までが原発事故のせいにされていた」と山下氏は振り返る。その轍(てつ)は踏みたくない。