妄想記事の解説の続き

http://www.nytimes.com/2006/06/11/world/asia/11tokyo.html

具体論です。記事の各個の部分について述べます。

Indeed, the Japanese government is now moving toward revising the Fundamental Law of Education, which was drafted in 1947 during the American occupation to prevent a revival of prewar nationalism.

ここでは、
(during the American occupation) to prevent a revival of prewar nationalism
がそれです。『教育基本法が戦前の国粋主義の復活を抑えるため』というのは、ノリミツ・オオニシの評価であって、事実かどうかは別に検証するべきものですが、その検証はない。ノリミツ・オオニシの文章は、この手の『評価』で論理を作る手法を多用しています。

The occupation-era law replaced the prewar Imperial Rescript on Education, which had instructed children to sacrifice themselves for the state and the emperor.

ここでは、
which had instructed children to sacrifice themselves for the sate and the emperor
がそれです。教育勅語は本当に国家と天皇のために身を捧げよと言っているのか。その検証がないのは全く同じです。そもそも、教育勅語を知っている米国人は、普通はいません。知っていれば、もう普通の人じゃない。だから、『教育勅語はこういうものなんだ』と刷り込めば話が通る。ノリミツ・オオニシの使うのはこの手の洗脳手法です。

実際の教育勅語は短く、全文は以下の通りです。

教育ニ関スル勅語 - Wikisource

繁育ニ關スル勅語

朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ繁育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン

斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ

明治二十三年十月三十日

御名御璽

勅語は『なんじしんみん』に何をせよと言っているのかと言えば、『爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重ジ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ』つまり、『両親に孝行し、兄弟、夫婦、友達仲良く、謙虚に倹約して、人々を分け隔てなく愛し、学問を修め、仕事を習得して、知能をよくして、人徳をなしとげ、公共の利益を増進し、事業を起こして、憲法・法律を尊重し、非常時にはおおやけのために武器をとり、天地のごとく永久の皇運をたすけよ』と言っています。おおやけに奉ぜよとは書いてありますが、もっと具体的なこと、『ふぼにこうに、きょうだいにゆうに、ふうふあいわし、ほうゆうあいしんじ』というのは見ないことにする訳です。ちなみに、現行憲法天皇機関説にたてば、皇運というのは、日本の集団としての運命のことになります。

続きます。