2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

トンデルの論文と、LNTを使ってECRRは10年で10万人という福島リスク計算を出している。

元に戻ってECRRは福島リスク計算をどうやって出したのか。 2µSv/hで100キロ圏が一様に汚染され、全部セシウム137だと仮定した。 空間線量のデータから逆算して表面汚染の崩壊数を計算した(空間線量と表面汚染の関係は以前に書きました)。 放射性物質…

120kBq/m2程度の汚染では、癌のリスクは他の環境因子の影響よりも小さくて問題にならない。

では、このトンデルの論文から分かる事は何か。それは、セシウム137の120kBq/m2くらいの汚染がおこったスウェーデンでは、癌や死亡率などは他の環境因子(例えば都会に住むことなど)の方が大きく、少なくとも10年くらいの観察では、問題にならない大き…

独立していない数字で補正しているのは、ほどんど漫才。

しかも、この補正、よく考えるとおかしなことが分かります。人口密度によるリスクと、コミュニティの分類によるリスク、肺がんのリスク、全癌のリスクは独立なんでしょうか?こんなの独立な訳はありません。 昔聞いた漫才で、お父さんはよく働いている、とい…

補正を重ねた数字に、有意差なし。

放射能汚染で癌がおこるためには、『問題の』60−79kBq/m2のところでも癌が増えてもらわねばなりません。それで前述の補正を重ねて出してきた数字がこれです。 左側を拡大する。60-79kBq/m2の所に注意。 右側を拡大すると、60-79kBq/m2のところが線量に応…

都会に住むだけで癌は5−16%増える。

これがトンデルの出してきた、補正一覧です。 左側の拡大。最初の欄Aをみると、人口密度が40人/km2以上になるだけで癌のリスクは1.09から1.10になります。 ちなみに、トンデルはもっともらしい数字を出そうとしてこんな補正を出してきたのでが、トンデルの主…

トンデルのデータそのままでは、汚染濃度60−79kBq/m2のところでは、死亡者数は1割減る。

これが、全死亡になると、もっと変なことになって、増えているのは、40−59kBq/m2と、80−120kBq/m2のところだけ。残りの死亡率は減っていて、『問題の』60−79kBq/m2のところは1割以上も減っています(0−3kBq/m2のところと比べて88.9%)…

トンデルのデータそのままでは、汚染濃度60−79kBq/m2のところでは癌はちょっとだけ減る。

ここで問題が出てきます。この場合、データを載せているので計算ができてしまいます。生データからそのまま計算すると、60−79kBq/m2のところでは0−3kBq/m2のところに比べて、発癌比率がほとんど同じ。男は、102.3%ですが、女は97.6%。図で…

トンデルの論文の主張

トンデル論文の主張を簡単に書くと、こうなります。 1986年から1987年の値を基準にして、種々の補正を加えた結果、1988年から1996年のスウェーデンでの癌の発生率を調べると、セシウム137の100kBq/m2の放射性物質降下に対して、癌の比率…

もとの論文の表題を見てみる。

もとの論文は、J Epidemiol Community Health 58:2011, 2004 です。 私は普通こういう論文の表題だけをコピーするなどということはしないのですが、今回は例外です。 何か、ECRRが参考文献に載せているものと違いませんか?普通に注意力のある人には、ECRRの…

ECRRは「今後10年間で10万人が癌で死亡する」と主張

ECRRのクリス=バズビーはこのとんでもないリスク計算なるものを発表しています。 ECRR Fukushima Risk Calculation p9 Assuming that no one moves away and that the contamination remains at this level, using the Tondel et al 2004 regression coeffi…

科学と倫理は関係ない。『いわゆる科学的真理』と『いわゆる社会的倫理』が結びつくと問答無用のファッショな社会になる。

科学の方法の内部には倫理はありますが、社会的な意味での倫理は全く別問題で、科学そのもので社会倫理を規定する事はできません。例えば、今回でも、『ドイツ政府の研究では原発近傍5キロで小児白血病は2倍になる』話は、何度も出てきていますが、あれは…

マイケル=クライトンは著書のState Of Fearで、『科学的真理』から引き出された『社会的倫理』を批判している。

State of Fear作者: Michael Crichton出版社/メーカー: Avon発売日: 2005/11/01メディア: マスマーケット クリック: 35回この商品を含むブログ (7件) を見る私が好きなマイケル=クライトンの本のなかにState of Fearというエコテロリズムの話があります。そ…

科学は正しいか正しくないか分からない所を、確かめながら、これでどうか、と考える作業。

放射線防護と少し離れますが、私の持論を書きます。世間の人が科学と言っていることは、何か難しいことだけれど、正しいと分かっている(筈の)こと、という意味です。少し前のマルクス主義者の人たちが言っていた、『科学的社会主義』の、『科学』はそうい…

この検証できない死亡者数は、科学ではない。

科学哲学者のカール=ポパーは、科学は反証可能性のある命題をだすことだ、と言っています。反証できないものは、宗教とか、信念とか、別にあってもよいものですが、とりあえず科学ではない。ロシアでの60万人くらいの数字なら統計をとって反証できる可能…

問題は、これが検証できないこと。

外部被曝はまだ検証可能で、モニターすれば推測があっているかどうか分かるが、内部被曝は適当もいいところ。さらに、放射線被曝が低ければ低い程、疫学的に有意の差で癌の死者が出ている事を示せない。おまけに、チェルノブイリでは原発事故で地域社会が崩…

降下物から被曝を推測する。

この降下物からの外部被曝は、地面の放射性物質の量から空間線量に変換する線量係数を調べると分かる。ただし、この線量係数も、地中への浸透によって5倍くらいの開きがあるのは述べた通り。文科省の文章を読んだ人は、家に入るといくら、校庭ではいくら、…

では、どうやって推測するのか。

核種を限定して、ヨウ素131とセシウム134と137、これの降下を調べて、その降下から、外部被爆と内部被爆を推定することになる。ところが、非常に広域の汚染がある場合、核種の降下を調べるだけでも、何年もかかる。となると、ヨウ素131はとうに…

この全然違う数字は適当な推測にかけ算をしただけ。

LNTでは集団線量を計算して、それに死亡確率をかけると、死者数がでるという話でした。ところが、個々人の外部被曝を実測するにはモニタがいる。モニタを付けていた人は、リクビダートル、もしくはリキデーター、つまりチェルノブイリを掃除していた人たちだ…

大規模集団、低線量でのLNTに基づく予測は予測になっていない。

例えば、今中さんの『チェルノブイリ原発事故調査を通じて学んだこと』に載っていた、チェルノブイリでのガン死の予測は下記の通り。それぞれの予測によって言っていることが全然違います。

私の雑感

COMARE報告は今までの大規模調査とほとんど同じ結論です。大部分の場合は白血病と原発の相関はない。しかし、少数の所で『統計的に有意な』小児白血病の集団が原発近傍で見つかる。このCOMARE報告の記事で引用されているKiKKの研究というのは、まさしく私が…

Published online 6 May 2011 | Nature | doi:10.1038/news.2011.275

News Nuclear power plants cleared of leukaemia link Investigation of cancer clusters should turn to non-radiation causes, say British researchers. Daniel Cressey 原発は白血病と関係ない イギリスの研究者たちによると、白血病患者集団の理由の調…

それであっても当然おこる疑問。

その37人の集団がたまたま特異なのではないか?そもそも『ドイツの原発一般』でおこっているのか?特定の原発でおこっていることなのか? 『原発からの距離』は物質的には何が原因であるのか?著者がにおわせているような放射線被曝なのか?遺伝要因や、感…

原発5キロに対する対照の取り方について一言。

そもそも、この対照の取り方では、同じ地域から選んだといっても、問題としているドイツの原発は19基、半径5キロ、5歳以下、この条件にあう人は相当少ないので、本当に対照となりえているのか、という疑問がでます。この論文は住んでいる人の*数*を問…

オッヅ比を検算する。

距離を輪切りしている方は論文に載っている数字だけで計算できるので、私が検算すると、5キロ以下のところは、2.11になります。論文での値は少しずつ高くなっているのですが、理由は分かりません。 このデータを見ると、小児白血病患者の住んでいる地域の偏…

論文の内容を見てみる。

ここで引用されている最初の論文は、Kaatsch et. al. Int J Cancer 122:721, 2008のことです。 この研究で調べたのは、ドイツの原発近辺での小児白血病の増加が意味のあるのことなのか、ということです。ドイツでは、ドイツ小児がん登録 = German Child Canc…

原発近郊での小児白血病が増えているという話を検証してみる。

もともと、イギリスのセラフィールド原発の周りに小児白血病が増えているのではないかというテレビ番組があり、一方ドイツではドイツのクルーメル原発の周りで小児白血病の集団発生が見つかったという話がありました。それで、ECRRはなんと言っているかとい…

小児白血病の地理的分布には構造があるのではないか?

脇道ですが、この小児白血病の分布では、ある程度以下に領域を区切ると、もともとホットスポットがでるような分布なのじゃないのだろうか。GCCRはほとんどの小児白血病の地図上の場所(経度緯度)を知っているはずだから、調べれば分かる筈。この論文のデー…

この論文をECRRはどう使ったのか

ここで、振り返ってECRRがどういっていたのかを思い出すと、 ドイツでは疑いなく、全原発の近傍で小児白血病が二倍以上に増えた。 *論文の著者達*がICRPのリスクモデルが少なくとも1000倍間違っていると言っている。 根拠となる論文は2報。 でした。一番…

この論文では*原発からの距離*しか問題にしていない。

また、この論文で注意しないといけないことは、この論文は、小児白血病と、『原発の煙突からの距離』の相関を調べていることです。(原発からでるかもしれない放射線による)被曝線量など測っていません。低すぎて測れないんです。だから、放射線や、放射能…

ICRP111で言っている参考値は、最適化するために使う指標。最適化(例えば除染や個人モニタ)をしないのなら、意味がない。

ICRP publication 111で新しく出ているのは、1-20mSv/年の*下の方*に線を引いた、参考値=reference levelの考え方。*1これは、個人モニタを行って、高度被曝をしている人がいないことを確認し、できるかぎり下げる*参考*にするという意味。それ以下が無…