2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

旧ソ連で90年代は何がおこっていたのか。

今までの概観をみても、90年代初頭から始まって90年代にいろいろな急激な社会構造の変化がおきたことは間違いない。 65歳以上人口を見ると、80年代後半からロシア・ベラルーシ・ウクライナでは老齢化が進み、カザフスタンは若年人口が多いものの、老…

国家の管理できる感染症とできない感染症

この統計をみると、統制国家であるベラルーシでは、予防医学的にはちゃんとした対策を行っていることが分かります。 ポリオ、百日咳、麻疹などワクチンの確立しているものは、統制国家なら管理できる。 例えば小児まひをおこすポリオ。これには確立したワク…

年齢調整済み死亡率は、チェルノブイリ後悪化して回復したものと、関係ないものがある。

年齢が死亡に関して一番大きな要素なので、年齢調整済み死亡率(SDR)を調べると、大きく分けて、ベラルーシでは、90年代にある程度増えたものと、ほとんど変わらなかったものがあることが分かります。ただし、90年代に死亡率が増えたほとんどの場合は、…

全体の傾向として、ベラルーシの小児の保健状態は改善している。

ベラルーシでの5歳児以下の死亡率は、以前ツイした通りですが、あれは、WHOの各国概観に載っているまとめからとったものなので、もう少し詳しく見ます。 これを見ると分かりますが、全ての国で5歳児以下死亡率は低下傾向にあり、ベラルーシ(赤)は旧ソ連…

WHOのヨーロッパ支局のHFADBには、ヨーロッパの保健データが公開されている。

WHOのヨーロッパ支局の公開しているHFADBは、誰でも入手可能で、ヨーロッパ諸国の保健データを比較できます。WHOの分類では旧ソ連はヨーロッパに分類されるので、これを用いて、ベラルーシの保健状態がどう変化しているのかを調べました。WHOのデータを使っ…

ベラルーシのエートス計画は1996年から。

ここで簡単に復習しますが、ベラルーシでジャック・ロシャールさん、ジル・エリアール=ドブレイユさんたちがエートス計画を始めたのは1996年です(エートス1とエートス2、2001年まで)。その後、セイジ計画(2002−2005年)、コア計画(2…

フランスに住んでいるコリン・コバヤシが宣伝しているミッシェル・フェルネックスの動画がありますが、ここで、エートス計画が始まって以来ベラルーシの健康状態が悪化し、あたかもエートス計画で放射線防護を進めると子供の健康状態が悪化するという因果関係があるかのような主張をしています。

ミッシェル・フェルネックスというのは、退職したスイス人の医者で熱帯医学(マラリア)が専門です。その関係でWHOでも働いておりました。放射線被曝の影響は特に専門でもなく、放射線の被曝に関する論文を出している人ではありません(pubmedによる)。もち…

現存被曝状況への移行は一律にはおこるとは限らない。

汚染地域が広い場合、現存被曝状況へ同時に移行しない可能性がある。現状では、警戒区域は現存被曝状況とは言えない。放射能が減衰していくにつれ、汚染の程度によって、また該当区域の政治的、経済的状況によって、順次現存被曝状況へ変更されていくことに…

現存被曝状況への移行は当局が決定する。

まず最初に、住む許可を出すのが最初の決定で、これは本文3.1の『正当化』のこと。当局が現存被曝状況への移行を決定する理由は、この決定をするということは、現存被曝状況で、ちゃんとした生活手段があり、まともな生活ができることを、当局が保証するのが…

緊急被曝状況は中央集権的に管理、現存被曝状況は分散的に管理。

放射線防護の戦略は、緊急時には中央集権的に果断な処置が求められるが、ある程度被曝が下がり、長期的な問題になる時は、現実の生活の向上を主眼として、該当住民の直接参加を旨として分散的な防護戦略に移る。勧告では、緊急被曝状況から現存被曝状況への…

全体の構成としては、ICRP 103, 109, 111がセットになっている。

ICRP 103。この勧告は長大な構成で、様々の被曝状況を列挙して、こういう場合には、こういう指針で対策をとる、という枠組みを決めたもの。このICRP 103は、その前のICRP 90(現行の日本の法律の基盤になっているもの)を置き換えた、最新の土台となるもの。…

概要のところを追加する。

1.2 概要 1.2. Scope(6) 核事故もしくは、放射能の非常事態は、短期的、中期的、長期的対策を含む指針により管理される。短期的、中期的対策に関する最新の指針は、緊急被曝状況下の人びとの放射線防護のための委員会の勧告の適用、ICRP 出版物109 (ICRP109)…

ICRP111では、『拘束値を適用しない』と宣言している。

これは、拘束値を使うと、実際の防護行動が困難になるという実際の経験からの政策的な判断である。だから、『ICRPの基準は1mSv/年』という『基準』を『拘束値』の意味で使っているとすれば、最初から間違っている。同様に、『ICRPでは1mSv/年以上は原則移住…

ICRP111での『正当化』はICRP90までの『正当化』と意味が異なる。

ICRP90までは被曝自体を選ぶか選ばないかの選択に正の便益(職業上の利益や、医療上の利益)しかないこと前提にしている。しかし、住んでいるところが長期に汚染された状況では、被曝しないことを選ぶと、それに付随する負の便益(=損害。家を追い出される…

日本語の通常の使い方と混同する人がいるので、いくつかのICRPの用語は括弧つきにしてある。

ここで出てくる『正当化』は倫理的に正当化するという意味ではない。ICRPの用語では、『正当化』は被曝をする状況と、被曝をしない状況を比べて、種々の状況を踏まえた上で、被曝する状況を選択しうる(=現存被曝状況では、そこに居住可能とすること)を指…

『被曝1mSv/年を超える地域は移住が原則。』は妄想

ICRP111での『正当化』の意味が分かっていない人が散見され、また、一部の文章を抜き出して、堂々と妄想を書く人がいるので、ICRP111の『正当化』を説明している、ICRP111の3.1を全訳しておく。『正当化』の説明としては、概要の部分で短く触れているが、本…