年齢調整済み死亡率は、チェルノブイリ後悪化して回復したものと、関係ないものがある。

年齢が死亡に関して一番大きな要素なので、年齢調整済み死亡率(SDR)を調べると、大きく分けて、ベラルーシでは、90年代にある程度増えたものと、ほとんど変わらなかったものがあることが分かります。ただし、90年代に死亡率が増えたほとんどの場合は、旧ソ連すべての国で起きた現象で、チェルノブイリの汚染とは関連していません。

癌、糖尿病はチェルノブイリ後ではなく、80年代初頭から増え始め、90年代半ばにピーク。それからゆっくり下がっている。


年齢調整済み全死亡率。これは90年代半ばに増え、2000年代に減り始めています。



年齢調整済み全悪性新生物(癌)死亡率。事故前の80年代初頭から増え始め、90年代半ばにピークを迎え、その後減っています。



年齢調整済み呼吸器系の癌死亡率。これも同じで、80年代初頭から増え始め90年代にピークを迎えてから減っていきます。



年齢調整済み乳がん死亡率。これは、80年代初頭から増え始めているが、90年代で高止まりして、その後減っていません。



年齢調整済み内分泌器官の癌死亡率。放射線によっておこることで有名な(小児)甲状腺がんはこちらに入ります。80年代から増え、90年代にピークを迎えてその後ゆっくり減少しています。甲状腺がんは死亡自体が少ないので、他のがんと比較すると、このピークの中に埋もれています。



ここで、似たような経過を辿っているものに、糖尿病があることに注意して下さい。カザフスタン(緑)が一番変化が大きい。被曝などしなくても、巨大な社会の変化がおきれば、糖尿病患者を量産します。

以上見ると、全体の傾向として、癌は80年代から増加を始め、乳がんの増加など、典型的に都市型の癌が増えている。(日本でも乳がんは都市部に多い。)従って、チェルノブイリ事故直前から比べて癌が増えているのは、事実ではあるけれど、それは事実の一部で、実は80年代初頭から増えていることが分かります。

感染症結核)は、明らかに90年代に悪化している。


年齢調整済み感染症死亡率。
感染症の悪化のパターンは違います。これは、カザフスタン(緑)に特徴的な、明らかなピークが90年代にあり、その他の旧ソ連諸国も漸増している。それでも、ベラルーシ(赤)は死亡が一番低い。



年齢調整済み結核死亡率。
この感染症の増加のざっと8割くらいの原因は結核結核は、開放性の患者からの空気感染だから、患者からの接触が増える、衛生の悪い集団生活や、低栄養、貧困などが誘因となります。また、治療薬はあるものの、長期にわたる服用が必要となるので、資金的または情緒的支援(要するに、薬を飲むように気をつけてくれるひと)が必要となる。もう一つの可能性はHIVをもった人への日和見感染ですが,



HIVの感染率。HIVの感染が増え始めるのは、96年頃からなので、これは結核の原因ではないと思いますが、特にウクライナは危険な状況ですね。