120kBq/m2程度の汚染では、癌のリスクは他の環境因子の影響よりも小さくて問題にならない。

では、このトンデルの論文から分かる事は何か。それは、セシウム137の120kBq/m2くらいの汚染がおこったスウェーデンでは、癌や死亡率などは他の環境因子(例えば都会に住むことなど)の方が大きく、少なくとも10年くらいの観察では、問題にならない大きさだということです。小児甲状腺癌の増加がないことも、私の結論が妥当である事を示していると言って良い。実際、この論文の表7はこうなっています。

左側を拡大すると、それぞれの地域での甲状腺癌の比率がでています。例えば、40kBq/m2以上のところでは、十万人あたり1.84。

右側を拡大すると、その同じ地域の甲状腺癌が1.55に下がっています。

ロシア、ウクライナベラルーシでは、小児甲状腺癌が10年でざっと100倍程に跳ね上がったことを思い起こすと、10倍程度でもあがれば簡単に分かった筈です。ところが、スウェーデンでは甲状腺癌は実数でほぼ同じか減っていることが分かります。*1しかも、9歳以下の小児甲状腺癌はゼロ。*2一番感度の良い、被害のよく分かる甲状腺癌ですら影響が出ていないのだから、他の癌で目に見えるような変化がないのは不思議ではありません。

*1:減っているのも統計的には変化があるとは言えません。

*2:小児甲状腺癌の定義は15歳以下。