2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ICRPが何もモニタも対策もとらなくて良いと言っているのは1mSv/年以下のところだけ。

ICRPに準拠すれば、1mSv/年以上はすべて正当化と最適化をしなくてはならない。

文科省はICRPのいう『最適化』を行っていない。

私がシツコク反対する二つ目の理由は、文科省はICRPの要求する最適化を行っていないから。『被曝するにしても、出来るだけ少なくすべき』。だから、ICRPは当局に対して、個人モニタや、除染等、合理的な措置を求めています(ICRP111)。『20mSv/年は無害(だか…

文科省の20mSv/年以下なら安全、という宣伝はICRPの採用しているLNT仮説に反している。

そもそも、原理原則として、ICRPはLNT仮説を採用しているから、どんな微量の放射線でもそれに比例したガンの確率があることを前提に話をしている(例えばICRP99)。もちろん、LNT仮説は『分からないことを分かった事にする政治的な問題』だから、LNT仮説をと…

文科省の決定は、ICRPの正当化原則に従っていない。

今回、私が文科省の通達および説明に対して、シツコク反対している一つ目の理由は、ICRPの正当化原則から『20mSv/年以下は被曝して良い』とは絶対に言えないから。利益がゼロのものに対して被曝するのは、ICRPの基本的な考え方からすれば、たとえ1mSvであろ…

汚染地域に住む人たちの『得』は主観的なものだから、当事者本人にしか判断できない。

ただし、今回の低度汚染地域では、放射線を受ける利益はないが、それに対する措置、例えば、疎開や移住を行えば害(不利益)がある。大量の人間を移送すれば必ず死人がでます。弱い人、病気な人がいる。家族がバラバラになる。それを考えると、疎開や移住を…

原発の被曝を医療被曝と比べることは筋違い。

枝野長官などは、CTがどうの、医療X線がどうのと医療被曝と比べていましたが、ICRPの正当化原則から言えば、トンデモない。医療は、CTなどによる診断の利益と、放射線の害を比較して診断の利益が多い時に患者の納得づくで受けるもの。患者の利益は最終的に患…

郡山市や福島市の被曝は正当化できない。

今回の原発事故の例をとります。低度汚染地域、郡山市や福島市の中心部では、正当化原則によると、放射線の害があることは明らか。放射線を受ける事そのものの利益はない。だから、正当化できない。伝統的なICRPの考え方に準拠すれば、結論はここでおしまい…

ICRPの考えでは、ジャスティフィケーション(正当化)、オプチマイゼーション(最適化)が大事。

基本的に*どんな微量放射線でもガンになる確率はある*から(LNT仮説)、『放射線を受ける利益と害があるとして、利益が多いとすればよし、害が多いとすればだめ』これが『正当化』です。同様に、『同じ被曝をするにしても、できるだけ少なくするべき』これ…

ICRPのいう正当化と最適化

もともと、この文章は、ジャーナリストの江川紹子さんが、東電会見で『ICRPに20mSvという数字を確認したのか』と質問をしているのを聞いて書いたツイートでした。私は、文科省の20mSv/年以下は安全であるという決定や宣伝に反対していますが、その理由を説明…

最後に長崎大学の山下さんは悪くない。

長崎大学の山下さんが100mSvまで大丈夫だ、と言っているのを私は分からないでもない。それを非難している人もいるのは知っています。が、ICRPのモデルでも、100mSvを被曝して癌で死ぬのは、三割方ガンでもともと死ぬ日本人のうち、0.5%。ということは、集…

低度汚染地域に住む3つの理由。

一つ目には、強制移住の負荷は、他人が簡単に言う程軽くはないこと。前にも書きましたが、今回の双葉町の移送では45人が混乱の中でなくなっています。生命だけでなく、経済的な負荷も非常に大きい。二つ目には、政治的な問題ですが、今、退去すれば、帰る…

中通りに残るかどうかは、一人一人の政治的決意の問題。

ここで、科学の話はおしまいで、後は政治的な話になります。ちゃんと除染をし、汚染されたものを食べないというような、合理的な対処をすれば、福島の中通りで住む事は一つのまともな選択肢だと私は思います。被曝する期間が長くなる子供は特に被曝を押さえ…

オーストリアの例を応用すると

今回の中通りの例に応用すると、セシウム137の降下は、このオーストリアの例とくらべて最大20倍(600kBq/m2)くらいだと思いますが、それであっても、セシウム内部被曝は、4.8 mSv/ 4年位を覚悟すればよいことになります。これは、意外と多くない。真面目…

福島の中通り、低度汚染地域ではどうなるのか。

ここは、最大で1-4µSv/h程度、今後核種の崩壊がおこり、さらに、適切な除染を行えば、10 mSv/年以下には下げられそうなところです。中部大学の武田さんには怒られそうな話ではあるが、この10mSv/年は、私は地球上に住むときのリスクだと思っています。根拠は…

セシウム134、137を実測した論文。

チェルノブイリで本当にセシウムの内部被曝を人間で実測した私の知っている二つの例のうちの一つで、オーストリアで実際に人間の筋肉からセシウム137を測った論文があります(J Nucl Med 32:1491, 1991)。これは、素晴らしい論文。この論文では、25-35 kBq…

東電は汚染地域を買い上げて、低度汚染物質を保管せよ。

従って、この地域は、土地建物一切を東電が買い上げるしか方法がない。住んでいた人はあきらめて、他の地域へ移住せざるをえない。ここにあった自治体はすべて消滅することになる。いくら希望的観測を述べた所で、ふるさとに戻りたいといったところで、物理…

東電アトミックランドはヘイセイの遺跡になる

この地域では、セシウムの半減期からして、安全に人間が居住できるためには、10半減期の300年程待つことになる。セシウムの実質半減期は、12-20年という論文もあるが、それでも120年。従って、何百年かたって人が原発近郊の汚染地域に戻ってくると、…

高度汚染地域は奇妙な動物の楽園になる

セシウム137に高度に汚染された地域は、生態系のなかでセシウムが循環し、どこかに出て行くということはない。これは、セシウムが物理的に崩壊するまで変わらない。チェルノブイリ近郊では、人がいなくなったせいで、天然記念物のような稀な動物がもどり…

飯舘村の値を検算してみる

飯舘村役場の値の場合、3月末の時点でセシウム134が700kBq/m2セシウム137が800kBq/m2であり、半減期の長いセシウム137のみで計算されている、チェルノブイリの立ち入り禁止区域の基準の半分。この空間線量はこの時点で、5µGy/h。単位を計算し直す…

検算してみる。

米国エネルギー省のBeckの論文(EML-378)によると、地表汚染から空間線量への変換係数は、セシウム137で、 1.07E-2 から 2.31 E-3 (µRad/h)/(mCi/km2) この数値の幅は、セシウムがどのくらい深くに地下に浸透しているかによる。浸透が深い程、土で遮蔽され…

チェルノブイリでのセシウムの汚染はどうなったのか。

現時点で3月15日の大放出から約二ヶ月弱、半減期8日のヨウ素131はほとんど崩壊してしまっている。従って残りは、半減期の比較的長いセシウム134(2年)とセシウム137(30年)になる。チェルノブイリ事故の結果、3700平方キロは現在でも…

今の所、放射能大規模放出は3月15日のみ

今回の原発事故で、今後の大規模放射能放出がないと希望的に仮定すると、福島の命運はだいたい予測できる。大規模放出は、前回のように、測定しやすい核種であるヨウ素131が空間線量をガンガンあげるので、すぐに分かる。各地のモニタをみれば、今のとこ…

政府は、被曝と、健康の長期モニタを決意せよ。

『ICRPに従えば、20mSv/年まで無害であるから、一切の支援をしない』という文科省は、そのICRPに従っているということ自体嘘であるうえに、不誠実、倫理的に最低の態度だ。私が政府に求めることは、事情を正直に話して、地元の人がどうするのか、腹をくくっ…

原発事故の影響は、放射線ばかりではない。=他の社会的な影響を無視してはならない。

原発事故が甲状腺癌をひきおこすことは明白であるが、チェルノブイリ事故ではそれ以外に怪しいものがある。白内障、先天性の奇形、種々の固形癌、若い女性の乳癌、循環器疾患、免疫系の異常、精神神経疾患など。これらは、統計的には被曝によると示せないが…

セシウムの低度汚染の効果は不明。

私に言わせれば、ICRPの好きな『放射線量の形而上学』は官僚がする時間と金の浪費。科学の人がすべきことは、セシウムの内部被曝を実験で検証することだと思う。とても汚い実験になるので、実験施設に嫌がられそうな実験ではある。ヨウ素131が甲状腺癌ば…

セシウムの汚染は、森や池沼、”自然なところ”で持続する。

森林など、土壌が移動しない地域では高度の汚染が継続するので、山菜や山のノイチゴ、キノコ、山の動物などが汚染される。湖や池など、水が移動しない所も同じ。そこでの魚は食用にすべきでない。森林の除染は今の所、実用的な方法がないので、こういう状態…

セシウムの汚染は数十年は続く。300年も待てば消える。

事故から一ヶ月経った今、長期リスクはヨウ素ではなく、セシウムにかわる。セシウム137は半減期30年、セシウム134は半減期2年。チェルノブイリの例では年率5%くらいで放射能はゆっくりと下がり、だんだん減らなくなる。水で流されたりするところ…