文科省の決定は、ICRPの正当化原則に従っていない。

今回、私が文科省の通達および説明に対して、シツコク反対している一つ目の理由は、ICRPの正当化原則から『20mSv/年以下は被曝して良い』とは絶対に言えないから。利益がゼロのものに対して被曝するのは、ICRPの基本的な考え方からすれば、たとえ1mSvであろうと正当化できません。これを正当化して良いというのは、前述のように、ICRP109やICRP111のように、住民の現実的な『不利益がないという利益』と比べる話の場合。この場合は、放射線の利益と、害を比較するわけだから、その*利益*は何かが問題です。それは、疎開、移住というチェルノブイリでとられた最終手段をとると害があるから、それをしないのが利益、政府も問題をないことにすれば、面倒が減って利益、というのが本音です。が、ICRPのいう『利益』は政府の都合ではなくて、被曝する地元民の主観による利益だから地元民しか決められない。だから、正しい質問は、『政府はどのような利益が被曝の害より大きいと主張しているのか?その利益は地元民が判断すべきものなのではないのか?』『文科省に地元の子供たちやその親の主観的利益を決める権利はあるのか?誰がその責任をどうとるのか?』『疎開した方が良いと判断した家族に政府はどのような措置、援助をとるのか?』になります。責任をとりたくないから、決定したプロセスを文科省は言いたくない。私はそれに腹がたつ。