汚染地域に住む人たちの『得』は主観的なものだから、当事者本人にしか判断できない。

ただし、今回の低度汚染地域では、放射線を受ける利益はないが、それに対する措置、例えば、疎開や移住を行えば害(不利益)がある。大量の人間を移送すれば必ず死人がでます。弱い人、病気な人がいる。家族がバラバラになる。それを考えると、疎開や移住を行わない利益があるとも言える。ICRP109やICRP111で言い出したのは、この『今そこにある被曝』にどう対応するのか。汚染があっても住むという選択肢があるのじゃないか。正当化原則から言えば、『不利益を被らないという間接的利益』があるのではないか。ただし、その利益の大きさは郡山市福島市に住んでいる*当事者にしか判断できない*。だから、低度汚染地域に住むかどうかは、ICRPの正当化原則からすれば、地元民が決めるべきもの。目に見えない、主観でしか決められない利益と放射線の害を比べるわけだから、これは科学の話ではない。個人や集団の意思、つまり、住民の政治決定の話です。だからこそ、ICRP111は『住むか住まないかを決める参考線量』を決める時に利害関係者が決定に参加することを求めています。文科省が勝手に決めて良い事ではありません。