コネチカットの選挙は反戦左翼*3の勝利ではない。

http://tameike.net/pdfs6/tame329.PDF

「ブッシュへの怒り」が過剰になっている例として、ジョー・リーバーマン上院議員をめ
ぐる奇妙な状況がある。2000年選挙において、アル・ゴア候補の”running mate”(副大統領候
補)になったほどの有力議員であり、この秋の4度目の選挙は「勝って当然」と見られてい
た。が、来週、8月8日にコネチカット州で行われる民主党予備選挙において、現職のリーバ
ーマンが新人候補に負けるかもしれないという椿事が生じている。

ラモント候補は州内の反戦気運を追い風としており、「進歩的なブロガーたち」の支援を
受けている。そして7月30日には、このところ急速に反ブッシュ色を強めているNew York
Times紙もが「ラモント支持」を打ち出した。いわく、リーバーマンはブッシュ減税に反対
し、女性の中絶の権利を支持し、環境と資源保護の問題の権威である。しかしブッシュ大統
領にとって、もっとも都合のいい協力者になってしまっている。今度の予備選挙は、彼の「歪
んだ超党派ぶり」に対する信任投票であり、本紙はラモントを支持する……。
米国政治における党派色の強まりは、2000年のフロリダ再集計以来、ブッシュ政権下で一
貫して強まってきた。米国政治が不毛な対立を続ける中での中道派の受難を絵に描いたよう
な情勢といえる。

不規則発言では、コネチカットの選挙を『米国政治の二極化』と呼んでいました*1が、私は違うと思います。『二極化』というのはリーバーマンによる意見で、リーバーマンは、独立候補として上院選挙に出ることを表明していますから、自分の売りである『反二極化』を売り込みたい、そういう思惑が見え隠れします。

火曜日のBrian Lehrerの予備選当日の特集で、コネチカットから投票を済ませて電話をかけてきた人たちの、第一の関心事はやはりイラク。しかし、これは日本での『反戦平和』とちょっと空気が違います。『もう、いいかげん、いや』というイライラ感が深く底流にあると思います。その対象は実はイラクだけではありません。フロリダのテリー・シャイボー事件*2で、リーバーマン共和党による延命法案に賛成したのに反発する声もあります。あれやこれやで、リーバーマンのように妥協するのではなくて、ハッキリ民主党の価値観を言ってほしい、そういうリーバーマンに対するイラダチ感が印象的でした。実際に電話をかけてきた人は8割方ラモントに投票しています。

ただ、本当の底流はこれではなくて、『ガソリンの高値』なのではないか、と私は密かに思っています。ガソリンはこの一年間、特にカトリーナ前後で、ほぼ2倍に上がっています。これは、裕福でないアメリカ人にとっては本当にイラダツ問題で、毎週毎週現政権の失政を確認させられているようなものです。他人がイラクで死んでくることより、自分の懐から10ドル20ドル余分にとられることの方が実感はきつい。それも毎週となるとマグマの様に不満はたまっていきます。それもこれも、勝ち戦でないイラク戦争を始めたせいで、『その責任は、ここコネチカットでは、リーバーマンにとってもらう』、そうなったのではないか。イデオロギーや観念での反戦ではなくて、もっと体感的な不快感が根底にあると私は感じます。

*1:不規則発言の方に書いてあったと思うのですが、今見ると前にあった記述が削除されているようです。私の思い違いか?

*2:脳死寝たきり状態の妻の延命を夫が拒否し、妻の親族は希望して裁判で戦っていた件。最後に連邦議会が立法をして介入したが、結局妻は、延命を打ち切られた