ところでヒロさん日記

ヒロさん日記で英語の本の紹介がありましたが、私が実際に読んだもので軽いものを書いておきます。

State of Fear

State of Fear

マイケル・クライトンの本は、はずれたことはないのですが、これも面白いものでした。地球の温暖化が本当におこっているのか?という問題意識で書かれていて、グリーン・ピースをもっと過激にしたようなエコテロリストがでてくる、非常に面白い本です。


Prey

Prey

これもマイケル・クライトン。文章は平易です。ナノ・テクノロジーと集団行動(単一の単位では単純な仕組みが、集団では複雑な反応を示す、例:蟻や、野鳥の群れの行動)というものをもとにして、それを延長するとどういう世界がまっているのかを書いています。問題的には面白いのですが、その延長の仕方が少し現実感に欠ける。


Blood Memory

Blood Memory

グレッグ・アイルズは面白い作家で、『24時間』とかは日本語で読みました。で、この本の話題は近親の性的虐待ミシシッピ下流の風土で、さすが地元民であるだけあって、雨に濡れるミシシッピ川の中洲の島の描写など素晴らしいのですが、性的虐待については、私は不満でした。何か私にもよく分からないのですが、どうも、フロイト的な解釈で過去の虐待がトラウマになり、連鎖していく、というのが余りにも分かりやすすぎるストオリイであったのが不満なのかも知れません。


この本で出てくる、危ない心理療法家がグループ・Xでおこなったトラウマの治療は、竹内敏晴の竹内レッッスンの系譜をひく松井洋子などが行っているゲシュタルト療法に似たところがあります。というより、それそのものです。過去のトラウマを再体験し、それを集団で体感することで『癒す』ということは、実際には、ある特定の物語を頭の中に注入するに終わる、非常に危険な方法である、と私は思っています。人は、種々の物語を利用して生きています。集団での熱狂的な体感を梃子に、『嘘』である物語を否定して、特定の物語を注入するのは、人がもともと持っているよって立つすべを破壊する結果に至ります。この原理は別段松井洋子の『からころ』だけではなくて、オウムで、ヨーガを使ったビックリするような身体の変容に付け込んで、都合よい理屈を注入することと同じです。このグレッグ・アイルズ本ではそれが殺人をも引き起こすことになっているのですが、私にとっては、さもありなん、というだけで、何の驚きもなかったから不満に感じたのかもしれません。



The Footprints of God: A Novel

The Footprints of God: A Novel

これもグレッグ・アイルズ。これは素晴らしい。人間の知能とコンピュータを結合させて、インターネットにつなげるとどういうことがおきるのか、という話です。知能をコンピュータに移植する部分、実際にそのコンピュータから逃げながら闘争する主人公、アメリカの田舎の描写、すべて素晴らしい。おすすめです。


By the Light of the Moon

By the Light of the Moon

クーンツはわりと売れているサスペンス作家らしい。で、この話、超常能力をもつ知恵おくれの弟と兄(とある女性)の冒険劇ですが、世間ではジェット・コースターと称されるものは、私には支離滅裂としか思えませんでした。


Life Support

Life Support

テス・ゲリツェン(と読むと思う)、は医者出身の作家で、二つの話を収録しているこの本は素晴らしい。女医さんの描写は非常にリアルですし、臓器移植が問題になる『ハーベスト』と人工延命技術の話である『ライフ・サポート』は両方とも一押しです。文章もやさしい。


The Sinner: A Rizzoli & Isles Novel

The Sinner: A Rizzoli & Isles Novel

The Apprentice: A Rizzoli & Isles Novel

The Apprentice: A Rizzoli & Isles Novel

この二つもゲリツェンによるものですが、どちらかというと刑事物(例えばパトリシア・コーンウェル風)の色彩がつよく、初期の上記よりは数段落ちるしあがりになっています。まあ、内田康夫風の驚かないサスペンスでしょうか。


Big Trouble

Big Trouble

デイブ・バリーの本は初めて読みました。むちゃむちゃ面白い。Interestingじゃなくて、hilariousというやつ。これは私の得意とする(?)サスペンスではなくて、小説なのですが、チンピラがひょんなことで核兵器を手に入れるという、それも誤解が誤解を生んでとんでもない筋書きになります。とてもアホな話で、それなりに楽しめます。雰囲気で言うと、フロスト警部*1と似ています。


The Sigma Protocol

The Sigma Protocol

このロバート・ルドラムの本、延命とナチスユダヤ人の過去という非常に面白い本です。サスペンスであると同時にバイオである。


The Tristan Betrayal

The Tristan Betrayal

これもロバート・ルドラムの本ですが、期待して読んだのに、ただの国際スパイ小説で、退屈。残念でした。


Twisted: A Novel

Twisted: A Novel

ジョナサン・ケラーマンの本で、コンピュータ・オタクの青年がある怪しい犯罪パターンを抽出し、それを年上の女性刑事と解決するという話。New York Times Bestsellerとなっていますが、なんで売れたのか分からない本。


Monkeewrench (A Monkeewrench Novel)

Monkeewrench (A Monkeewrench Novel)

このP・J・トレイシーは母娘の合作らしい。怪しい連続殺人の話ですが、読まなくてもよいです。

*1:

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)