染色体7q11の遺伝子検査をして、将来甲状腺癌になるかどうかわかるのだろうか?

結論から言うと、分かるという根拠はないし、そういう遺伝子検査は意味がありません。

この話の由来は、国会や、その他の説明資料で後述するPNASのHessの論文を根拠に、児玉龍彦さんが、『甲状腺ヨウ素被曝=7q11での遺伝子の重複=小児甲状腺癌の発症』と誤解される説明をしたことにあります。この関係はイコール、つまり、すべて100%の確率でおこることではありません。


児玉さんのスライドでの説明。これだと、7q11での重複が原因で、重複があれば、いずれ必ず甲状腺癌になるように見える。実は、7q11の重複がRET/PTC組換えを起こすというとは言えない(後述)。



実際、ヨウ素被曝をしても、程度が低ければ発癌しませんし、高度の被曝をしていても大部分は発癌しません。チェルノブイリでは、ベラルーシのゴメル地区で、25万人の子どもが甲状腺の等価線量で平均0.61Gyの被曝(福島で測定されている最大の子供の20倍程度)をしたと推測されていますが、(J Radiol Prot 26:127, 2006)、癌化したのはベラルーシ全体で4000人規模、ゴメルだけならそれ以下なので、1.6%以下しか発癌していません。チェルノブイリ級の無茶苦茶な被曝であっても、発癌しない人の方が圧倒的に多い。

これを踏まえた上で、遺伝子検査の意味がない理由を書きます。