2012-01-12から1日間の記事一覧
この論文から言えることは、7q11の重複はチェルノブイリでのヨウ素被曝に強く相関しているということです。この重複は、被曝していない検体には全く見つからないこと、また、ヨウ素被曝が甲状腺癌を引き起こす事を強く示唆する疫学のデータを考えると、ヨウ…
この詳細領域をオリゴDNAをプローブにして詳細にコピー数を調査すると、BACで行ったCGHと基本的には同じ結果が得られました。ただし、重複している共通領域は、7q11.22-7q11.23の領域の2.9Mbpの領域に狭められました。著者等は、この7q11の重複領域は、性別…
先程の検証実験で、7q11.22-7q11.23の領域が増えていることが分かったので、その領域の遺伝子産物がコピー数の増加の結果増えているのかを定量的PCRで確認しています。比較しているのは、『被曝していてコピー数が増えている検体』と『被曝していてコピー数…
細胞の中でのコピー数の確認方法には、fluorescence in situ hybridization = FISHといって、蛍光標識プローブを使って、遺伝子の数を組織切片で数える方法があります。ここで、彼らは、参照用として、コピー数の変化していない2番染色体のセントロメアの側…
以上のことを踏まえて、もとのPNASの論文をみてみましょう。もとの論文は、 Gain of chromosome band 7q11 in papillary thyroid carcinomas of young patients is associated with exposure to low-dose irradiation Hess et. al. Proc Natl Acad Sci U S A…
2000年になって、甲状腺癌、黒色腫、大腸癌などでBRAFの変異が関与していることが報告されました。変異のなかでも、遺伝子で1799番目のチミンからアデニンの変異(T1799A)、アミノ酸に直すと600番目のバリンがグルタミン酸に変わる変異(V600E)がもっともよく…
RET遺伝子からできる蛋白質の構造と、組換えでできる融合蛋白質 RET(rearranged during transfection)は、もとはNIH3T3細胞で組み替えをおこす癌遺伝子として発見されました。RETは染色体の10q11.2にあり、増殖因子であるGDNFの受容体です。一回膜貫通構造で…
甲状腺癌は、内分泌器官の癌としてはもっともありふれたもので、新たに診断される癌の約1%にもなります。もっともよくあるのは、甲状腺癌の8割を占める甲状腺乳頭癌であり*1、遺伝子としては、膜貫通型のチロシンキナーゼ型受容体である、RETやTRK、GTP結…
仮に、遺伝子検査をして、7q11の重複があるのかないのか分かったとします。そうすると、4通りの場合があり、普通は以下のように対応することになります。 1)重複がなく、甲状腺癌にならなかった場合は、何もその先しない。 2)重複がなく、甲状腺癌にな…
福島での甲状腺癌被曝の規模は、チェルノブイリと比べて二桁は低く、まず、小児甲状腺癌の患者はでないと予測されます。田崎先生の文章を参照して下さい。その状況で、まず癌化もしない子供の正常な甲状腺の組織をとることは正当化されません。
もとの論文は、甲状腺癌の組織を取り出してきて、その癌に遺伝子異常があるかないかを調べたもの。癌は、異常になった細胞が増殖したものですから、癌の組織だけをとりだすと、その遺伝子異常が分かりやすい。しかし、この論文は癌になる前の組織を調べたも…
後ほど論文については書きますが、チェルノブイリの汚染地域で甲状腺癌を発症した子供の甲状腺癌の組織を調べて7q11の遺伝子異常がある割合は、4割。小児甲状腺癌を汚染地域で発症していても、6割の患者には、この遺伝子異常はない。しかも、ベラルーシで…
結論から言うと、分かるという根拠はないし、そういう遺伝子検査は意味がありません。この話の由来は、国会や、その他の説明資料で後述するPNASのHessの論文を根拠に、児玉龍彦さんが、『甲状腺のヨウ素被曝=7q11での遺伝子の重複=小児甲状腺癌の発症』と…
この論文はあまり一般的ではないので、結論から書きます。細かい理由を知りたい人だけ、最後まで読めばよいでしょう。