Spixの論文は放射線被曝ががんが増えている原因であるとは言っていない。

実際にこの論文の結論では、

In Germany 1980–2003 we see an increased risk for cancer in children under 5 years of age, particularly leukaemia, when living in proximity (<5 km) to a nuclear power station. This observation is not consistent with most international studies, unexpected given the observed levels of radiation, and remains unexplained. We cannot exclude the possibility that this effect is the result of uncontrolled confounding or pure chance.
1980年から2003年のドイツでは、原発の近傍(5キロ以内)に住んでいると、5歳以下の小児がん、特に白血病のリスクが増える事を見いだした。この事例は多くの国際的研究とは符合せず、実測できる放射線からして、意外なものであるし、説明はつかない。この効果が、制御できていない交絡因子や、単なる偶然の結果による可能性を排除できない。

となっています。Kaatsch, 2008の論文と似たような結論ですが、この結論なら別にそんなにおかしくはない。
 私が査読した場合なら、(1)ドイツの原発一般に言える事なのか、個々の原発でのリスクを調べよ、(2)KiKKは小児がんの95%の住所のデータを持っているのだから、原発のそば以外で患者集団が発生しているのかいないのか分かる筈なので、こういう患者集団は原発のそば特異的に起きている事なのか示せ(3)癌のリスクがあがると結論づけているが、それは80年代の話。90年代ではそうなっていないのだから、それを反映した結論にせよ、という3つの要求を出すでしょう。それが出なければ認めない。
 (1)については、KiKKの方は、一つずつ原発を外しても同じ結論になった、とKaatschの論文と同じ予防線を張っています。しかし、16ある原発のうちの2つでこういうことがおきていれば、残り14の原発では全く影響がなくても同じ結論になりますから、このKiKKのグループの研究は私は満足できるものとは思えません。少なくともクルーメル原発では白血病患者集団がいることは確認されているから、クルーメル原発と何か他の物を除くべきものです。