1997年に行った10歳以下の6例の子供の検屍の結果は、心臓、甲状腺、副腎、膵臓に非常に高いセシウム137の集積を示す物がある。


これが、表1に示されているものです。人の筋肉のカリウム40が100Bq/kgであることを基準に考えると、非常に高い値であることが分かります。ただ、この表1のデータは、次に説明する図1と一致していないし、(図1では甲状腺の平均は1200Bq/kg、この表1では、2863±2399Bq/kg)、表2とも一致していません(表2では甲状腺は2054±288Bq/kg)。

よく見ると、個人間の差が著しい事が分かります。特に膵臓の個人差は激しく、膵臓の値の標準偏差を計算するだけで、この表1のデータは後に出てくる表2の52人のデータの一部ではない事が分かります(表2のデータでは、平均1359、標準偏差が350となっている。もし、この表1のデータが表2のデータの一部であれば、標準偏差は表1の4つの値だけで
√(1/51)*[(11000-1359)^2+(12500-1359)^2+(1329-1359)^2+(2941-1359)^2)]=2074.94になり、全体ではこれ以上でなければならないが、これですらすでに350を越えている。)この6例のデータをどうして全体を纏めた表2のデータと分けてだすのか、私には理解できませんし、その理由は説明されていません。なぜ理解できないかと言えば、この6例のデータは、膵臓の値が表2の52人のデータとかけ離れていることから、全体を代表するような例ではなく、ある特異なグループを選んでいると言っているのに等しいからです。


幸い個々では個別の計測値が載っているので、検算してみます。

この6例の子供の場合、標準偏差が大きい事もあって、心筋と比較して測定されたBq/kgが有意に差があるのは、肝臓が有意に低いというだけです。これだけでは、心筋と比較して内分泌器官に集積していると結論できません。

この個人差が内部被曝の程度が個々人によって大きな差があることが理由であると考えて、内部被曝の程度を心筋で代表できるとします。教科書的には骨格筋なのですが、この表1には骨格筋のデータがありません。そこで、心筋と比べて、どの程度蓄積されるかを比をとってみます。これが個別の全ての比の値です。

平均と標準偏差をとって、心筋の値とt検定を行うと、心筋より低くて有意なのは、肝臓と腎臓、高い方は膵臓で、甲状腺を含め、他の臓器は有意差はありません。だから、どうしてこういう形でデータを切り分けるのか私には分かりません。