1997年のゴメル地域での52人の10歳までの子供の検屍で測定した各臓器のセシウム137は甲状腺、副腎、膵臓に多い。


これは表2に載っているものです。この表の説明には52人と書いてありますが、本文中は51人と書いてあるのは、ご愛嬌です。

13臓器の測定の平均と標準偏差を載せていますが、この13臓器は表1のものと違って、骨格筋が入っていて、胃が抜けています。この表では、標準偏差は表1の時程大きくはなく、甲状腺にある程度集積しているようにみえます。ただし、その場合でも骨格筋の2倍程度です。

以上が論文のデータです。

著者は、要旨で『セシウム137は内分泌器官、特に甲状腺、副腎、膵臓で最も高い蓄積を示した。*1』と述べています。甲状腺と副腎は確かに内分泌器官ですが、膵臓での蓄積が外分泌腺か内分泌腺かを示していないので、内分泌器官一般にセシウムが集積するとは言えません。切片を切ってオートラジオグラフィをとれば分かる筈です。また、論文の結論として『経済的理由で、毎年行っていたサナトリウムに子供が住む期間が短くなり、汚染地域は「汚染なし」と分類され、汚染されていない無料の食物の供給が停止された。*2』と書いていますが、もちろんそんなことはこのデータからは言えません。著者がこういう論文を、データと関係のない社会的なスローガンを発表する手段と考えているとすれば、私が論文だと思っているものとは大分違います。

*1:The highest accumulation of Cs-137 was found in the endocrine glands, in particular the thyroid, the adrenals and the pancreas.

*2:For reasons of economy the annual sanatorium stay has been shortened, and communities in some contaminated areas have been classified as “clean”, thus ending the supply of clean food from the state.