ただし、ラットを使った別のグループの動物実験では、ものの見事にアップルペクチンが効いていない。

Gall, Biochemie 88: 1837, 2006
Comparison of Prussian blue and apple-pectin efficacy on 137Cs decorporation in rats

フランスのグループがラットを使って動物実験を行ったものですが、プルシアンブルーとアップルペクチンを比べたものです。
セシウム137を静脈注射して、同時にプルシアンブルー、アップルペクチンを与えたもの、何も与えないものの3つのグループで比較しています。プルシアンブルーでは、理屈通りに糞便へのセシウムの排出がすすみ、尿中への排出は減るものの、総合すると11日間での結果は、アップルペクチンと何も与えない場合はセシウムが等しく50%くらい残っているのに対して、プルシアンブルーでは25%くらいになる、というのが論文の大意です。

図3をみると、アップルペクチンと何も与えていないグループの値は見事に一致し、

表1。

表1の左の拡大。

表1の右の拡大。

表1で、個別の数字を見ても、プルシアンブルーは調べた全ての臓器でセシウムを排出促進しているのに対して、アップルペクチンは何も与えていないグループと見事に一致しています。アップルペクチンは役に立たない、という結果です。

ただし、

  • このグループの使ったアップルペクチンはシグマから買ったもので、BELRADが使っていたVitapectと同じものではないので、いろいろなペクチンによって効果が違うのか*1
  • ラットと人では効果が違うのか
  • 一気に静脈注射した場合と、ずっと体にたまっているセシウムを排出する場合には効果が違うのか

分かりません。

ペクチンもものによっては効かないかもしれませんが、プルシアンブルーは効きます。ただし、プルシアンブルーは急性の重症患者に使うもので、あるかないか分からないようなセシウム内部被曝を防止するためには使われていません。これについては後日。

以上が最初に述べた結論の理由です。

*1:ペクチンは複雑な多糖類の総称で、単一の化合物ではない