2011-01-01から1年間の記事一覧
このレビューでは、4つの主要な仮説を挙げていて、 核施設から排出される放射性物質や化学物質によるという説 子供が受精する前の父親の電離放射線被曝によるという説 大規模工事による人口流入による住民の混住による感染によるという説 もともと原発予定…
このレビューは、複数の原発などで行われた25の大規模調査をもとに、小児白血病のリスクが原発一般であがると結論できないと言っています。その25の調査の結果は以下のとおり。よく出てくる患者集団の名前を私が注釈としてつけました。 表の前半。 左の…
この論文は局所的な研究についても述べています。この特定の患者集団は、実は、有名な物が繰り返し出てくるので、細かくなりますが、出しておきます。 Among the 198 sites reported, three excesses met the stated evaluation criteria and could be consi…
原発一般で小児白血病が増えているかどうかを知るのには、レビューを調べるのが簡単です。私が良いと思うのは、Laurier, Radiat Prot Dosimetry 132:182, 2008です。この論文は、2008年の時点でpubmedに載っている関連論文を全部集めてその分析をしてい…
こういう論文から、ECRRへ至る論理はどうなっているのか、というと、(1)ドイツの原発の原発近傍でいくつかの小児白血病の患者集団がある。(これが最初の事実)個別の患者集団を*原発すべて*に一般化して、 (2)従って、『原発近傍に住むことは小児白…
ECRRが言っていたことを再掲すると、 ECRR 2010 p130 Recently, a study of childhood cancer and leukemia by distance from all the nuclear sites in Germany from 1984 to 2004 unequivocally demonstrated the effect; in children aged 0-4 the risk w…
前述の、80年代では有意になることが90年代では有意になっていない、という問題のほかに、Kaatsch, 2008の論文と同じく、この論文には大きな字で『ただし』と書いておかなければならないことがあります。 もともと、このKiKKの二つの論文で本当に言いた…
表4。 左半分の拡大。 右半分の拡大。 この状況は、計算モデルを変えた場合でも同じ。結局、小児白血病のみ差があります。以前にKaatsch, 2008の所でも書いたように、この小児白血病が有意になる理由は、いくつかの小児白血病の集団があって、その30数人…
それで、表3に載っている結果をみると、全癌では、距離に従って癌が増えるというモデルで有意差があるが、その癌の分類をみると、実は白血病でしか有意でない。小児白血病以外の癌患者は有意ではないし、そもそも中枢神経の腫瘍は原発のそばに寄ると減って…
上の図1に載っている地図が研究対象となった原発です。小児白血病患者集団がいることが分かっているクルーメル原発に印をつけておきました。この研究の方法は、前に書いたKaatsch、2008の時と、全く同じです。というよりも、実は、同じデータセットを使って…
実際にこの論文の結論では、 In Germany 1980–2003 we see an increased risk for cancer in children under 5 years of age, particularly leukaemia, when living in proximity (power station. This observation is not consistent with most internation…
表5。これまでのドイツの研究の要約。 左側の拡大。 右側の拡大。 ここで表5をみると、これまでのドイツの疫学調査での結果は有意差なしとありの二つのパターンがあることが分かります。この結果をみると、有意差があると結論を出しているのが、3つ、ない…
ECRR2010で低度被曝の放射線リスクがICRPの言っている数字より1000倍くらい大きいと主張している話は、『私がECRRを狂気の集団だというわけ』のところで書きました。そこで根拠として、Kaatsch, 2008とともに挙げてあったのが、Spix, Eur J Cancer 44: 275, …
元に戻ってECRRは福島リスク計算をどうやって出したのか。 2µSv/hで100キロ圏が一様に汚染され、全部セシウム137だと仮定した。 空間線量のデータから逆算して表面汚染の崩壊数を計算した(空間線量と表面汚染の関係は以前に書きました)。 放射性物質…
では、このトンデルの論文から分かる事は何か。それは、セシウム137の120kBq/m2くらいの汚染がおこったスウェーデンでは、癌や死亡率などは他の環境因子(例えば都会に住むことなど)の方が大きく、少なくとも10年くらいの観察では、問題にならない大き…
しかも、この補正、よく考えるとおかしなことが分かります。人口密度によるリスクと、コミュニティの分類によるリスク、肺がんのリスク、全癌のリスクは独立なんでしょうか?こんなの独立な訳はありません。 昔聞いた漫才で、お父さんはよく働いている、とい…
放射能汚染で癌がおこるためには、『問題の』60−79kBq/m2のところでも癌が増えてもらわねばなりません。それで前述の補正を重ねて出してきた数字がこれです。 左側を拡大する。60-79kBq/m2の所に注意。 右側を拡大すると、60-79kBq/m2のところが線量に応…
これがトンデルの出してきた、補正一覧です。 左側の拡大。最初の欄Aをみると、人口密度が40人/km2以上になるだけで癌のリスクは1.09から1.10になります。 ちなみに、トンデルはもっともらしい数字を出そうとしてこんな補正を出してきたのでが、トンデルの主…
これが、全死亡になると、もっと変なことになって、増えているのは、40−59kBq/m2と、80−120kBq/m2のところだけ。残りの死亡率は減っていて、『問題の』60−79kBq/m2のところは1割以上も減っています(0−3kBq/m2のところと比べて88.9%)…
ここで問題が出てきます。この場合、データを載せているので計算ができてしまいます。生データからそのまま計算すると、60−79kBq/m2のところでは0−3kBq/m2のところに比べて、発癌比率がほとんど同じ。男は、102.3%ですが、女は97.6%。図で…
トンデル論文の主張を簡単に書くと、こうなります。 1986年から1987年の値を基準にして、種々の補正を加えた結果、1988年から1996年のスウェーデンでの癌の発生率を調べると、セシウム137の100kBq/m2の放射性物質降下に対して、癌の比率…
もとの論文は、J Epidemiol Community Health 58:2011, 2004 です。 私は普通こういう論文の表題だけをコピーするなどということはしないのですが、今回は例外です。 何か、ECRRが参考文献に載せているものと違いませんか?普通に注意力のある人には、ECRRの…
ECRRのクリス=バズビーはこのとんでもないリスク計算なるものを発表しています。 ECRR Fukushima Risk Calculation p9 Assuming that no one moves away and that the contamination remains at this level, using the Tondel et al 2004 regression coeffi…
科学の方法の内部には倫理はありますが、社会的な意味での倫理は全く別問題で、科学そのもので社会倫理を規定する事はできません。例えば、今回でも、『ドイツ政府の研究では原発近傍5キロで小児白血病は2倍になる』話は、何度も出てきていますが、あれは…
State of Fear作者: Michael Crichton出版社/メーカー: Avon発売日: 2005/11/01メディア: マスマーケット クリック: 35回この商品を含むブログ (7件) を見る私が好きなマイケル=クライトンの本のなかにState of Fearというエコテロリズムの話があります。そ…
放射線防護と少し離れますが、私の持論を書きます。世間の人が科学と言っていることは、何か難しいことだけれど、正しいと分かっている(筈の)こと、という意味です。少し前のマルクス主義者の人たちが言っていた、『科学的社会主義』の、『科学』はそうい…
科学哲学者のカール=ポパーは、科学は反証可能性のある命題をだすことだ、と言っています。反証できないものは、宗教とか、信念とか、別にあってもよいものですが、とりあえず科学ではない。ロシアでの60万人くらいの数字なら統計をとって反証できる可能…
外部被曝はまだ検証可能で、モニターすれば推測があっているかどうか分かるが、内部被曝は適当もいいところ。さらに、放射線被曝が低ければ低い程、疫学的に有意の差で癌の死者が出ている事を示せない。おまけに、チェルノブイリでは原発事故で地域社会が崩…
この降下物からの外部被曝は、地面の放射性物質の量から空間線量に変換する線量係数を調べると分かる。ただし、この線量係数も、地中への浸透によって5倍くらいの開きがあるのは述べた通り。文科省の文章を読んだ人は、家に入るといくら、校庭ではいくら、…
核種を限定して、ヨウ素131とセシウム134と137、これの降下を調べて、その降下から、外部被爆と内部被爆を推定することになる。ところが、非常に広域の汚染がある場合、核種の降下を調べるだけでも、何年もかかる。となると、ヨウ素131はとうに…