マイケル=クライトンは著書のState Of Fearで、『科学的真理』から引き出された『社会的倫理』を批判している。

State of Fear作者: Michael Crichton出版社/メーカー: Avon発売日: 2005/11/01メディア: マスマーケット クリック: 35回この商品を含むブログ (7件) を見る私が好きなマイケル=クライトンの本のなかにState of Fearというエコテロリズムの話があります。そ…

科学は正しいか正しくないか分からない所を、確かめながら、これでどうか、と考える作業。

放射線防護と少し離れますが、私の持論を書きます。世間の人が科学と言っていることは、何か難しいことだけれど、正しいと分かっている(筈の)こと、という意味です。少し前のマルクス主義者の人たちが言っていた、『科学的社会主義』の、『科学』はそうい…

この検証できない死亡者数は、科学ではない。

科学哲学者のカール=ポパーは、科学は反証可能性のある命題をだすことだ、と言っています。反証できないものは、宗教とか、信念とか、別にあってもよいものですが、とりあえず科学ではない。ロシアでの60万人くらいの数字なら統計をとって反証できる可能…

問題は、これが検証できないこと。

外部被曝はまだ検証可能で、モニターすれば推測があっているかどうか分かるが、内部被曝は適当もいいところ。さらに、放射線被曝が低ければ低い程、疫学的に有意の差で癌の死者が出ている事を示せない。おまけに、チェルノブイリでは原発事故で地域社会が崩…

降下物から被曝を推測する。

この降下物からの外部被曝は、地面の放射性物質の量から空間線量に変換する線量係数を調べると分かる。ただし、この線量係数も、地中への浸透によって5倍くらいの開きがあるのは述べた通り。文科省の文章を読んだ人は、家に入るといくら、校庭ではいくら、…

では、どうやって推測するのか。

核種を限定して、ヨウ素131とセシウム134と137、これの降下を調べて、その降下から、外部被爆と内部被爆を推定することになる。ところが、非常に広域の汚染がある場合、核種の降下を調べるだけでも、何年もかかる。となると、ヨウ素131はとうに…

この全然違う数字は適当な推測にかけ算をしただけ。

LNTでは集団線量を計算して、それに死亡確率をかけると、死者数がでるという話でした。ところが、個々人の外部被曝を実測するにはモニタがいる。モニタを付けていた人は、リクビダートル、もしくはリキデーター、つまりチェルノブイリを掃除していた人たちだ…

大規模集団、低線量でのLNTに基づく予測は予測になっていない。

例えば、今中さんの『チェルノブイリ原発事故調査を通じて学んだこと』に載っていた、チェルノブイリでのガン死の予測は下記の通り。それぞれの予測によって言っていることが全然違います。

私の雑感

COMARE報告は今までの大規模調査とほとんど同じ結論です。大部分の場合は白血病と原発の相関はない。しかし、少数の所で『統計的に有意な』小児白血病の集団が原発近傍で見つかる。このCOMARE報告の記事で引用されているKiKKの研究というのは、まさしく私が…

Published online 6 May 2011 | Nature | doi:10.1038/news.2011.275

News Nuclear power plants cleared of leukaemia link Investigation of cancer clusters should turn to non-radiation causes, say British researchers. Daniel Cressey 原発は白血病と関係ない イギリスの研究者たちによると、白血病患者集団の理由の調…

それであっても当然おこる疑問。

その37人の集団がたまたま特異なのではないか?そもそも『ドイツの原発一般』でおこっているのか?特定の原発でおこっていることなのか? 『原発からの距離』は物質的には何が原因であるのか?著者がにおわせているような放射線被曝なのか?遺伝要因や、感…

原発5キロに対する対照の取り方について一言。

そもそも、この対照の取り方では、同じ地域から選んだといっても、問題としているドイツの原発は19基、半径5キロ、5歳以下、この条件にあう人は相当少ないので、本当に対照となりえているのか、という疑問がでます。この論文は住んでいる人の*数*を問…

オッヅ比を検算する。

距離を輪切りしている方は論文に載っている数字だけで計算できるので、私が検算すると、5キロ以下のところは、2.11になります。論文での値は少しずつ高くなっているのですが、理由は分かりません。 このデータを見ると、小児白血病患者の住んでいる地域の偏…

論文の内容を見てみる。

ここで引用されている最初の論文は、Kaatsch et. al. Int J Cancer 122:721, 2008のことです。 この研究で調べたのは、ドイツの原発近辺での小児白血病の増加が意味のあるのことなのか、ということです。ドイツでは、ドイツ小児がん登録 = German Child Canc…

原発近郊での小児白血病が増えているという話を検証してみる。

もともと、イギリスのセラフィールド原発の周りに小児白血病が増えているのではないかというテレビ番組があり、一方ドイツではドイツのクルーメル原発の周りで小児白血病の集団発生が見つかったという話がありました。それで、ECRRはなんと言っているかとい…

小児白血病の地理的分布には構造があるのではないか?

脇道ですが、この小児白血病の分布では、ある程度以下に領域を区切ると、もともとホットスポットがでるような分布なのじゃないのだろうか。GCCRはほとんどの小児白血病の地図上の場所(経度緯度)を知っているはずだから、調べれば分かる筈。この論文のデー…

この論文をECRRはどう使ったのか

ここで、振り返ってECRRがどういっていたのかを思い出すと、 ドイツでは疑いなく、全原発の近傍で小児白血病が二倍以上に増えた。 *論文の著者達*がICRPのリスクモデルが少なくとも1000倍間違っていると言っている。 根拠となる論文は2報。 でした。一番…

この論文では*原発からの距離*しか問題にしていない。

また、この論文で注意しないといけないことは、この論文は、小児白血病と、『原発の煙突からの距離』の相関を調べていることです。(原発からでるかもしれない放射線による)被曝線量など測っていません。低すぎて測れないんです。だから、放射線や、放射能…

ICRP111で言っている参考値は、最適化するために使う指標。最適化(例えば除染や個人モニタ)をしないのなら、意味がない。

ICRP publication 111で新しく出ているのは、1-20mSv/年の*下の方*に線を引いた、参考値=reference levelの考え方。*1これは、個人モニタを行って、高度被曝をしている人がいないことを確認し、できるかぎり下げる*参考*にするという意味。それ以下が無…

ICRPが何もモニタも対策もとらなくて良いと言っているのは1mSv/年以下のところだけ。

ICRPに準拠すれば、1mSv/年以上はすべて正当化と最適化をしなくてはならない。

文科省はICRPのいう『最適化』を行っていない。

私がシツコク反対する二つ目の理由は、文科省はICRPの要求する最適化を行っていないから。『被曝するにしても、出来るだけ少なくすべき』。だから、ICRPは当局に対して、個人モニタや、除染等、合理的な措置を求めています(ICRP111)。『20mSv/年は無害(だか…

文科省の20mSv/年以下なら安全、という宣伝はICRPの採用しているLNT仮説に反している。

そもそも、原理原則として、ICRPはLNT仮説を採用しているから、どんな微量の放射線でもそれに比例したガンの確率があることを前提に話をしている(例えばICRP99)。もちろん、LNT仮説は『分からないことを分かった事にする政治的な問題』だから、LNT仮説をと…

文科省の決定は、ICRPの正当化原則に従っていない。

今回、私が文科省の通達および説明に対して、シツコク反対している一つ目の理由は、ICRPの正当化原則から『20mSv/年以下は被曝して良い』とは絶対に言えないから。利益がゼロのものに対して被曝するのは、ICRPの基本的な考え方からすれば、たとえ1mSvであろ…

汚染地域に住む人たちの『得』は主観的なものだから、当事者本人にしか判断できない。

ただし、今回の低度汚染地域では、放射線を受ける利益はないが、それに対する措置、例えば、疎開や移住を行えば害(不利益)がある。大量の人間を移送すれば必ず死人がでます。弱い人、病気な人がいる。家族がバラバラになる。それを考えると、疎開や移住を…

原発の被曝を医療被曝と比べることは筋違い。

枝野長官などは、CTがどうの、医療X線がどうのと医療被曝と比べていましたが、ICRPの正当化原則から言えば、トンデモない。医療は、CTなどによる診断の利益と、放射線の害を比較して診断の利益が多い時に患者の納得づくで受けるもの。患者の利益は最終的に患…

郡山市や福島市の被曝は正当化できない。

今回の原発事故の例をとります。低度汚染地域、郡山市や福島市の中心部では、正当化原則によると、放射線の害があることは明らか。放射線を受ける事そのものの利益はない。だから、正当化できない。伝統的なICRPの考え方に準拠すれば、結論はここでおしまい…

ICRPの考えでは、ジャスティフィケーション(正当化)、オプチマイゼーション(最適化)が大事。

基本的に*どんな微量放射線でもガンになる確率はある*から(LNT仮説)、『放射線を受ける利益と害があるとして、利益が多いとすればよし、害が多いとすればだめ』これが『正当化』です。同様に、『同じ被曝をするにしても、できるだけ少なくするべき』これ…

ICRPのいう正当化と最適化

もともと、この文章は、ジャーナリストの江川紹子さんが、東電会見で『ICRPに20mSvという数字を確認したのか』と質問をしているのを聞いて書いたツイートでした。私は、文科省の20mSv/年以下は安全であるという決定や宣伝に反対していますが、その理由を説明…

最後に長崎大学の山下さんは悪くない。

長崎大学の山下さんが100mSvまで大丈夫だ、と言っているのを私は分からないでもない。それを非難している人もいるのは知っています。が、ICRPのモデルでも、100mSvを被曝して癌で死ぬのは、三割方ガンでもともと死ぬ日本人のうち、0.5%。ということは、集…

低度汚染地域に住む3つの理由。

一つ目には、強制移住の負荷は、他人が簡単に言う程軽くはないこと。前にも書きましたが、今回の双葉町の移送では45人が混乱の中でなくなっています。生命だけでなく、経済的な負荷も非常に大きい。二つ目には、政治的な問題ですが、今、退去すれば、帰る…